はじめに

 高度薬剤師養成教育と臨床薬学研究の充実を目指し、1998(平成10)年4月に大学院臨床薬学専攻の基幹分野として新設された当薬物治療学分野は、初代石崎高志教授の功績によってその研究基盤を確立しました。

 その後、中川和子教授(現熊本大学薬学部・客員教授)が2004(平成16)年5月に助教授から昇任され、当分野の研究・教育体制を大きく発展されました。2015(平成27年)4月より、猿渡淳二准教授(2009(平成21年)1月に助教として着任、2015(平成27)年5月より現職、当分野博士課程修了・外資系製薬企業開発職を経験)と鬼木健太郎助教(2011(平成23)年4月着任、当分野博士課程修了・内資系製薬企業開発職と病院薬剤師を経験)の教員2名体制となり、若くて活気の溢れる研究室となっております。これまでに、合計74名(博士後期課程4名、博士前期課程48名、学士22名)の学生が当分野から卒業・修了し、ファイザー、ノバルティス、アステラス等の製薬企業の研究・開発職や、病院・治験関連施設の薬剤師・治験コーディネーターとして活躍しています。教員では、佐藤圭創准教授が2009(平成21)年4月に九州保健福祉大学薬学部薬学科感染症治療学教授に就任したほか、4名の助教(または助手)が分野の発展に貢献後、各領域で活躍中です。

 当分野の研究は、個別化医療の推進を目的として、薬物代謝酵素等の様々な遺伝子多型や他の個体要因(性別、喫煙歴、飲酒歴、併用薬等)と、薬物動態や薬力学、疾患感受性、病態との関係を明らかにすることで、患者背景に基づく、個々に適した薬物投与量の設定と、副作用発現並びに生活習慣病のリスク層別化を行うことに集約されます。現在は、国内外の共同研究施設とともに個別化薬物治療の対象拡大や疾病修飾遺伝因子の影響に関する定量的評価に関する研究を推進しております。

 教育面では、病態生理解剖学や薬物治療学を担当し、実践的な薬物治療や薬剤師としての資質育成に重点を置いています。2010年(平成22)年8月からは、中川教授(当時)が中心となって薬学部生の医学部実務実習への参加を開始し、現在6年目を迎えております(2015(平成27)年7月現在)。

 今後も「熊薬ブランドの臨床薬学研究者・指導的薬剤師」の輩出に尽力していく所存ですので、ご指導並びにご鞭撻の程、何卒よろしくお願い申し上げます。

平成27年7月31日
薬物治療学分野一同